年度別インデックス

外部有識者と学長との対談


新設する水産システム学コース、大学院の地域創生専攻設置計画の狙いとは?

〇神田氏  人材育成の話になりましたが、これから学部、大学院の改組で、先ほど高橋会長のほうからも農学部をしっかり強くしてほしいというお話しがありました。そういう中で今度農学部に水産システム学コースもつくりますし、あとは大学院に地域創生専攻をつくられる。少し狙いを教えていただけますか。
〇岩渕学長  地域創生専攻設置のきっかけは、やはり、東日本大震災ですね。今どちらかというと、先生方は研究志向で、学部も大学院のマスターもドクターも研究の深化と言っているから、地域創生をつくるというのはある意味で横を見る機会をきちっとつくってみたいなというか、つくらなきゃいけないという思いです。俯瞰力というか、総合力というか、そういうところでの役割というのを組織的にきちっとつくらなきゃいけないという。その中には当然グローバル的なものもあります。よそを見ることで自分のところを振り返られるから。高校生や若い人がアメリカへ行くとアメリカナイズされて帰ってくるだけで、日本のシステムは全否定になってしまうということを聞きます。若いときは、ある程度コアをつくって、日本はこうだよねとか、岩手はこうだよねとある程度理解して、こちらのいいところと比較することが大事だと思います。今回の地域創生専攻では、定員50人なら50人の学生全員を1週間でも1カ月でも半年でもいいですから、人それぞれに応じて外国を見る機会をつくってあげようと。外が見られる、自分のところと比較できる、相対的に自分のポジショニングを理解して、何をすべきかを考える。そのような機会をつくりたいと思っています。そのことが、6次産業化と相通ずるところがあって、一部分だけ知っていてもものづくりにならないので、全てを見渡せる、そのような人材が地域で活躍できる人材だと思います。まずそういうベクトルでつくって、それがもし必要であるとみんなが認識すれば、これが大きくなっていくというか、少しこういうものが重要であると、こういう意識をみんなで持ちましょうというところから始めたいと思います。
〇神田氏  わかりました。高橋会長は、農業に力を入れてほしいというふうにおっしゃっていましたけど、今度新しく水産コースをつくってやる。あとは、農業を含めても俯瞰的な人材を育てると岩渕学長はお話しになっていますが、そのことについてはどのようにお感じですか。
〇高橋氏  もちろん農業という、農学部ということで農業というお話ししましたけれども、実は岩手は林業においても、日本では2番目か3番目ぐらいの林業資源を持っていますね。先日、岩手経済戦略会議で、住友林業の市川社長もゲストの一人としてお呼びをしてお話を聞いたときに、「岩手の場合は樹種のバランスがとれている。特にカラマツが岩手の場合は非常に強みで、これは合板をつくるときも強度が杉なんかに比べると非常に高くて、有力な樹種になるというので、岩手の場合はこれから非常に楽しみだ。」ということを聞きました。ですから、林業の部分にも力を入れていくべきだし、もちろん水産については、とる漁業もそうですし、加工についても、私は非常に楽しみにしているのは、例えば宮古のチーム漁火とか、結構若い人が意欲的なところです。今30代から40代にかけて社長になっている方が大半を占めていますけれども、非常に漁業というか、水産業に対する意欲というのが高くて、しかも共通しているのがいかに稼ぐかという、そういうことが非常に強くて、やはり今までの農業にしろ、漁業にしろ、どちらかというと、先ほど学長がお話しされたように、農協とか漁協任せの、とるだけとか、つくるだけとか、そういうふうな発想しかなかったわけですが、いかに稼げる産業にするかという、そういう意識の変化というのが非常に感じられますね。
 それから、またすこし話は変わりますが、葛巻町の畜産開発公社の専務から、外貨を稼ぐというお話を聞来ました。
〇岩渕学長  外貨ですか。
〇高橋氏  外貨です。葛巻町では、一番手間のかかる生まれたての牛から搾乳ができる段階まで、牛を公社に集めて育成するわけです。でも、町内の牛だけで例えば500頭とか育てるだけでは、町内の酪農家からもらえるお金というのは微々たるものにしかならない。これをもっと広げることによって、町外からたくさんの牛を扱うことによって、町外からお金をたくさんもらえる。そうすると、外貨を稼ぐという感じなのですね。さらに小中学生の体験学習とか、そういうのをどんどん積極的に引き受けているわけですけれども、それも外貨を稼ぐためにやっている。つまり小学生とか中学生にとっても非常に有益な体験になる一方で、葛巻町にしてみると、そこに来てくれることによって、色々なお金が町内にもたらされる。こういうふうな発想が今できるようになってきているという。ここが非常に大きな意識の変化だというふうに私は見ています。まさに6次産業までいかなくても、そういった発想ができる人が誕生してきているということは、私は将来につながっていくという可能性が高いのだろうというふうに思っています。
〇神田氏  なるほど、わかりました。いろいろどうやってお金を稼いでいくかという、そのような経営的なセンスというか、そういうのもやはり教育の分野にも期待したいところでしょうか。
〇高橋氏  そうですね。
〇神田氏  水産システム学のコースは、そういう6次産業化のこともきちんと勉強すると伺っていますけれども。
〇岩渕学長  水産システム学のコースでは水産学のみならず、経済や経営の先生方も講義して、従来とは違う経営的な要素というか、科目も入れながらやっていくということですし、地域創生専攻はそれがもっと強く出てくると思います。
〇神田氏  そうですね。大平さん、今地域創生のいろいろな県の計画もつくっていますけれども、地域の資源を使って地域創生をしていくということでしょうか。
〇大平氏  まさにそうですね。地域の資源をいかに発掘して付加価値をつけるかということなので、今の水産の話で言えば、呼子のイカや函館のイカのように、全国の先進事例を見て、三陸でも新鮮なものをそのまま市場に出すということが考えられる。三陸に復興道路が完成すれば、例えば釜石から花巻まで1時間5分、宮古から盛岡でも1時間15分、八戸から仙台まで4時間程度で行けるとなると流通も変わるわけですね。流通が変わるという場合、冷凍で出すという流通のやり方もあるし、採れたての魚をすぐ築地に出すなど、何か付加価値を付ける方法もある。何か一工夫というか、ブランド化というところで三陸ならではというものをという時に、単なる水産分野だけではなくて、先ほどの経営の話とか、あるいはデザインなどに、岩手大学が全部関わって、また、あるいは岩手県も、銀行も関わって、総掛かりで象徴的なものを作ることができれば面白いと思いました。人文系の人たちも、経営とか法学とか様々な分野の人たちが一緒にやっていただいて、チーム岩手大学水産みたいな、そういうものができればいいなと思います。
 もちろんそういう場面には、女性や若者の活躍があるわけです。
〇神田氏  ありがとうございます。あと、地方創生に関して、大学院にそういう地域創生専攻をおつくりになるということでしたが、地方創生に関して岩手経済同友会で今回県の計画に対していろいろご提言もされていますが、そこら辺のお話を少しうかがってもよろしいでしょうか。
〇高橋氏 8月20日、21日の2日間、岩手経済戦略会議を盛岡で開催したわけです。この開催の大きな目的というのは、これまでの過去の延長線上ではなくて、やはり新しい戦略に基づいて地方創生をしていかなければ、岩手の地方創生というのは他の地域に比べて遅れてしまうのではないかという思いが1つありましたし、それから私自身も常々考えていることは、いずれ最終的には人の問題だろうと。人をいかに育成していけるかというものが地域間競争に打ち勝って、岩手が成長していく、持続的な成長を遂げていくための最も重要なポイントだというふうに思っています。私は産業界として、経済界とすれば、やはりまず真っ先に経営者がそういうふうな意識を持って、自分自身が変わっていく、そして成長していく、こういうことが大事だということで取り組みを始めたわけです。ただ、実際に開催をしてみて、思わぬことにさまざま私たちが刺激を受ける。ゲストとして日本を代表するような経営者の方に来ていただいてお話をしていただく中で、やはりいろんなヒントがそのお話の中に含まれていたということで、これをそのままにしておくのはいかにももったいないと。ぜひ県のほうにも、県の総合戦略の策定に当たっても、それを盛り込んでいただけるんであれば、私たちにとっても非常にありがたいことだという思いで、3つのことを提言させていただいたわけです。
 1つは、地域からのイノベーションの創出という、地方創生を考えるということは、要するに地方のさまざまな経営課題をどの様に解決をしていくかということですけれども、この解決策というのは地域の中からしか出てこないと思うんですね。ほかからいろいろアイデアをもらっただけでは、決してそれは本当の解決策にはならない。ですから、この解決策というのは、やっぱり地方が変わっていくためには当然変革をしていかなければならないわけですから、そこに必ずイノベーションというのがあるわけです。イノベーションというの、ここではかなり広く捉えていまして、必ずしも新しい製品を開発するようなイノベーションだけにとどまらずに、例えば販路を開拓したり、組織を活性化させたりすることもふくめて、さまざまな広い概念を持ったイノベーションという使われ方をここではしているわけです。そういう意味でこの岩手に合った、岩手にふさわしいイノベーションをぜひ実現をしていきたいというのが1つ目なのです。
 それのためには、さらにICTを活用する。特に女性の働く機会をもっともっとふやすあるいは若者が定着をして岩手のために働いてもらうためには、さらにICTの活用というものが非常に重要になる。グーグルの岩村さんがまさしくお話しされていたことですけれども、ICTを活用することによって女性が特に大変な出産や育児といったライフステージの変化というようなものを克服することができるわけです。意識だけを変えても、なかなか残念ながらそういった問題というのが解決できない。やはり仕組みを変えなきゃだめだと。仕組みを変えるための道具として非常に有効なのがこのICTの活用だということですから、私たちはどちらかというと意識の改革のところでとどまっているのですけれども、意識と仕組みを同時に変えることによって大きな変革をもたらしていけるというのが2つ目です。
 3つ目が、これが最後の肝ですけれども、やっぱり人の育成ですね。人づくりをいかに強化していくかということですけれども、実はこの3つのところは岩手大学が全部絡んでいるわけです。ですから、この県に行った提言というのは、同時に岩手大学に期待する点です。