年度別インデックス

外部有識者と学長との対談


岩手大学の地域における人づくりとは?

〇神田氏  ありがとうございます。特に人づくりの強化のところにもかかわってきますが、岩手大学でCOC事業とかCOCプラス事業とか、いろいろ今地域で行っている人材育成に特に力を入れていますけど、今のお話いかがですか。
〇岩渕学長  イノベーションというのは、プロセスイノベーションやプロダクトイノベーションを意識するのですが、人材育成にはカルチャーイノベーションの発想も必要ではないかと考えています。要は生き方の問題。特に学生の地元定着率を上げようといったときに、岩手大学の学生が岩手についてどれだけ勉強しているの、ほとんど勉強していないですからね。もう少し岩手の自然なり歴史なり文化なり。宮澤賢治や後藤新平という人間がどういう人間で、どういう活動してということも。後藤新平は、東京では知られていても、奥州市出身だとか意外と学生の意識の中にない。ですから、そういう中で岩手というもののよさをきちっと学生に学ばせることは当然のことだと思います。あとは会社の意識改革でいい学生をきちっと積極的に採用するような仕組みづくりをしてくださいというのは、多分経営者へのお願いです。
 もう一つは、価値観をどうつくっていくかというところがあります。学生が進路を決める場合、初任給をベースに会社を選んでいたり、あるいはネームバリューで選んでいたりする。要はそうではなくて、自然とか通勤時間を含めた人間らしい生活とか、そういうものを岩手が出さなきゃいけない。世界中の経済学者は、幸福になるためには物質的な発展を遂げることが必要だと言ってきました。しかし、ブータンは国民総幸福量の考えです。我々は成熟した社会だから物はある程度必要ですが、いつまでもお金じゃないですよね。そうすると、新しい価値観を、みんなで豊かさを共有しながら価値観をつくっていくという努力が必要ではないかと思います。学生にとっては、そのような価値観がかえって新しい価値観となる。それはマジョリティーじゃないにしても、こういう生き方があるよということを、地域でも世界に伍して仕事ができるし、休日は自然豊かな中で生活できるよとか。だからそういう幸福度係数とか、豊かさ係数というのか、岩手のほうが東京よりもいいところだよという、そのようなパラメーターをきちっと僕らが提案する。子育て環境にしても、通勤時間にしても。いろいろな意味で、みんな東京イコールベストと思うかもしれませんが、そうではない。要は文化の多様性に従った価値観を、岩手大学の人たちが理解しながら、岩手っていいところだよねと。地域を知って、地域のよさを理解して、地域に残って地域と考えながら地域をつくっていくかというのが、COCプラス事業のふるさといわて創造プロジェクトです。
〇神田氏  ありがとうございました。大平さん、県としてはILCの誘致にもすごく力を入れていらっしゃいますが、そういう中で岩手大学に誘致、あるいはそれに向けた人づくりという面で期待することはありますか。
〇大平氏  工学部を理工学部へ改組していただいたわけですが、理工系人材の養成は勿論ですが、県としては新しい分野にチャレンジするという点で、ものづくりの分野において、加速器に貢献できる部分があると思っています。今回、加速器関連の新産業に関する研究会を立ち上げて、工学部の藤代先生に会長を引き受けて頂きました。また、子供たちにもILCに興味を持ってもらいたいとも思っています。その子どもたちが中学生、高校生と成長する中で、岩手大学を目指そうとか、ILCの分野で研究したいとか、いろいろと考えてくれれば非常にありがたいと考えています。
〇神田氏  わかりました。
〇岩渕学長  ILCについては、予算規模が莫大だというところがあり、政治的な判断が必要なのだろうと思っています。実際に誘致が決定すれば、理学部系とか工学部系だけではなくて、まちづくり系とか教育系に対して我々がコミットしていけるのではないか考えています。それは、新しい1万人のまちをつくるとして、それは日本人だけじゃない、国籍も宗教も違うだろうし、いろいろなバックグラウンドもった人たちが住む。そういう中でコミュニティーをつくっていくということは、ある意味では、復興と一緒ではないかと思います。被災地の避難所や災害公営住宅で新しいコミュニティーができていくプロセスと同じではないかと。そこにどの様に我々がコミットしていけるかということ。ですから、もう工学、理学だけではなく、総合的な生活の空間をつくるという立場で言えば、大学はほかの学部の人たちもいろんな形でコミットしていけるはずだと思っているわけです。
〇大平氏  そうですね。例えば、教育学部では外国人の子供たちの教育をどの様に行うか、あるいは日本人の子供たちの英語教育をどのようにするか、というように環境が大きく変化すると思いますし、それを学ぼうとする学生が、岩手大学の教育学部に進学しようとする。そういう特徴付けにILCがなると思います。
〇岩渕学長  先ほどの地域先導という意味でいうと、グローバル化もそのひとつです。今、岩手大学には200人規模の留学生がいます。そういう中で、彼らが満足して日本で生活できるという環境づくりというのは、ここは新しい、例えばILCのコミュニティーづくりの事例になります。そのようにいろんな意味で岩手大学がトライすることによって地域のいろいろな雰囲気というか、やり方なり、方法論を提供できるということは、地域を先導するという意味合いになるのかなと思っています。