年度別インデックス

外部有識者と学長との対談


地方創生と大学の役割(2)

〇岩渕学長  最後になりますが、国会議員や経団連のお歴々に国立大学ではこんなことをやっていると説明すると「国立大学は遅れている」「もっと改革しなさい」と言われます。自分たちは法人化以降、常に改革、改革で、安定していない。これ以上何を改革すれば良いのかというのがホンネですけれども、学長のリーダーシップを発揮して、各学部を大学のベクトルにあわせたりする必要はあるのですが、多様化というのも一つの大学の道で、多様化すればするほど、意見の調整に時間がかかる。フォーラムで経団連の永里さんからは「リーダーシップが一つもありませんね」と言われてしまいましたが、増田さんから見て一般論として大学はどうあるべきか、岩手大学はどうあるべきかお聞かせいただけますか。
〇増田氏  今大学だけではなくて、経済界を見てもコーポレートガバナンスばやりと感じます。ガバナンスをどう強化するかといった議論ばかりですね。一番大事なことは、学生や研究対象と接する時間を多く取ることでその成果を出していくことだと思います。ただ、国からの予算が減り、成果に対し重点配分する方向のため、ガバナンスということが出てきているので、民間企業もですが、行き過ぎのガバナンス改革が違う方向に行ってしまうと目先の成果だけにとらわれてしまうのではないかと。長い目で見る必要があって、かたちだけ変えるのではなく、狙いは何なのかといったところまで考える。必要なのは、いろいろな経験やバックグラウンドを持った人達がそこに参加することでプラスに働いて、閉じられた中での議論は気がつかないところも出てきます。一般論ですが、異文化とか異分野の人が入ることで化学反応が起き、物事が変わっていくことが大事という話もあります。かたちだけ整えることが良いとは思っていませんが、バックグラウンドが異なった人が中にいることで、全体的に見て公平性が出てくるというのはあるのではないでしょうか。岩手大学が閉じられた中でやってきたのかどうかは、私は判断できませんが、岩渕学長の言われるとおり多様さを持ち込んで議論することは必要だと思います。
(質問)
〇質問者1
(小学生)
 僕は地域おこしの研究をしています。僕の住んでいる紫波町も人口が減っているのですが、何をして生活していけば良いのでしょうか。
〇岩渕学長  地域の活性化をするのであれば、大学に入って勉強して専門性を付けることが重要です。農業や工業、学校の先生、公務員、様々な選択があるけども専門性を持って、地域のリーダーになるようなことをすれば良いのかな。
〇増田氏  紫波町にはオガールがありますけども、全国的に注目されている施設、仕組み、成功例として挙げられている。オガールがどういうところから創ろうという話になったのか、予算はどうなっているのかといったところを地元の関係者に聞いてみると、地域創生の勉強になると思います。それと合わせて環境にも力を入れているので、例えば堆肥を作るための施設や循環型の社会を創るために努力してきたところなので、環境のことも合わせて学ぶのも良いかもしれませんね。地元には様々な取組があるので、なぜそのような仕組みにしたのか、どのように実行したのかというのを調べるのが今後に繋がっていくのではないでしょうか。
〇質問者2  今まで岩手の農業は世界に打って出るだけのものを生み出していない。それは岩手大学が岩手の農業への貢献が不十分だったからじゃないかと思っており、寂しい気持ちです。地域に密着して、10年、15年経っても良いので、岩手の農業はすごい、大学はありがたいとなって欲しい。そうすれば地域の子どもたちが岩手大学で学びたいとなると思います。岩手大学には一次産業に具体的に貢献できる取組をお願いしたい。
〇岩渕学長  岩手大学のオリジンとして盛岡高等農林がありますが、そのオリジンが地域の農業をどうするかですが、農学部の研究がアカデミックに偏っていた、大学がアカデミックであるのは当然のことで、でもじゃあその成果はどうするのということになるのですが、岩手大学は地域を先導すると言っているけどもどう先導するのかということを岩手銀行の高橋会長にも言われたのですが、やはり一次産業だよねと。一次産業を引っ張っていく姿勢が岩手大学に見えないと言われました。研究のネタをどのように実用化していくのか、岩手の農業をどのように変えていくのか、岩手の農業を変えることで日本の農業を変えていくといった気概を持ちましょうと言っています。そうすれば、子どもたちにも夢が与えられ、農学を勉強したいとなっていくのかなと。今そのように進めています。
〇増田氏  産業として見たときの担い手が高齢化していて、後継者が少ない。親が子どもたちに継がせるのは不安だということと、子どもからは親の姿を見てあそこまで苦労しているところに入っていくというのに閉塞感を感じています。農業は地方創生の事業でいうとど真ん中の政策で、これが日本の中で絶やされるというのは耐えられないことですし、国際的評価を見れば、安全度の基準が厳しい中で出てくるものですからステータスにもなっている。産業として後継者を繋いでいく仕組みにすることが急がれますし、十勝に行くとかなり後継者がいるのですが畑が無いと言っている地域もあります。気候変動によって地域で取れる作物も変わってきているので、岩手にとっても一つのチャンスだと思います。国でも一次産業に対する太い政策を出して欲しいと思いますし、地域を緑で維持していくうえでの農業の役割を評価した政策が行われ、人材育成とマッチさせる必要があるのかとは思います。
〇質問者3  大学というのは個人個人に個性を活かして勉強させることを志していると感じました。だから岩手大学は就職率も高い。そして就職先を辞めることも無いと繋がっていく。これを全国規模で行えば日本は本当に良い将来が開けていくのではないかと思いましたが、私のこの考え方は間違っているのかどうか教えていただければと思います。
〇岩渕学長  現在約50%の大学進学率で、専門学校を含めると78%くらいですが、私のころはトータルの進学率が25%くらいでした。昔は社会が寛容であって、18歳でいろいろな能力を持っている学生が個性を伸ばすことができた。今は時間割も埋まっていて、一所懸命勉強して、社会に出れば即戦力にならなければならない。自由度が無くなってきている。岩手大学では学生の課外活動の所属が6割くらいあって、活動を通して、先輩後輩の関係や地域との連携をしながら社会勉強をする。私からするとそれが当たり前ではありますが、対外的に見ると岩手大学の特徴だねと言われます。即戦力ではなくて、人間の成長に合わせて何をするのかということをもう一度考える必要があります。まさに教養教育をどうするのかというのが大学に問われていますので、人間の成長のために、我々は環境を用意していきたいと思っています。