年度別インデックス

外部有識者と学長との対談


若者が新分野に挑戦しやすくなる環境づくりや支援の仕組みを


遠野市:本田市長(左)、文科省:坂本産業連携・地域支援課長(中央)、岩手大学:岩渕学長(右)
〇岩渕学長  オープンイノベーション的に言うと、自治体だけではなく文科省にも局を超えて取り組んでもらいたいのですが如何でしょうか。
〇坂本氏

坂 本 修 一(Shuichi Sakamoto)

 1967年生まれ。京都大学工学部卒業、マサチューセッツ工科大学大学院原子力工学科修士課程修了、京都大学博士(エネルギー科学)。1992年旧科学技術庁入り。文部科学省研究開発局宇宙利用推進室長、地球・環境科学技術推進室長、大臣官房会計課予算企画調査官、総務課副長、ナノテクノロジー・材料開発推進室長、研究開発戦略官(核融合・原子力国際協力担当)を経て、2014年10月より科学技術・学術政策局産業連携・地域支援課長。
 文科省の組織をもっとイノベーティングするようにというのはおっしゃるとおりです。さきほど私もプレゼンでご紹介したガイドラインがまさに産学連携というものを進めていく上での一つのチャレンジです。
 つい最近まで産業界と大学は対立する存在と言われていましたが、我々は文科省の中で産業界と一番近い部署です。経団連とかその他の経済団体と風通しを良くしようと。その中でさっきのガイドラインの話が出てきました。「大学と産業界を結びつけることは価値があるからこそやっているのだから、一緒にやろうじゃないか」と、我々も文科省の中でやり始めています。特に、そういう担い手になるのは若い方です。若い方はそういうのをすぐに乗り越えられる。
 先ほど本田遠野市長からもお話がありましたが、そういう時にシニアの人たちに認められる80点とか90点の案を作ってから取り組むのではなく、とりあえずやってみる。更に、上の人たちが温かく見守るようなシステムなりカルチャーが必要です。もしかしたらアクションやプランや目標の中に乱暴な部分があるかもしれないけれど、でもやってみて価値が出そうだったらそれを褒め称えるし、「とりあえずやらせてみようよ、やってみようよ」という雰囲気づくりは、イノベーションを起こすのに必ず必要になってきます。
〇岩渕学長  イノベーションというと、新しい物を作って、それにいかに付加価値をつけて売って経済活動を活溌にするかというのが定義となっています。だけどその先に、文化を変え生活スタイルを変えという所を目指さないといけないと思います。スマートフォンにしても確かに悪い面はあります。ラインでいろいろ疎外され自殺に追い込まれたとか、いじめを受けたというような所もあるけれども、ウェアラブルでインターネットに繋がって情報が得られるようになった。そういうように生活までインパクトを与えるようなことが必要。イノベーションといった時に私がよく言うのは、地域イノベーション。イノベーションの前に「地域」がつきます。
〇本田氏 「地域」ですね。
〇岩渕学長  地域創生の中で様々なイノベーションを起こさなければなりません。『「まち・ひと・しごと総合戦略」」として考えたとき、仕事でどうやって若者を呼んでイノベーションを起こすかではなくて、その地域の社会システムまで変えて行くようなイノベーションが必要です。 産業はなくても良いけれど、新しい視点で町の方向性を提案していけるような人材が不可欠。まず人が重要で、それを実践させるリーダーの存在が鍵を握ります。
〇本田氏 そのとおりです。
〇岩渕学長  だから、例えば遠野市の人口が2万8千人を切ろうとしている現在に、60点の提案というのはどういう意味があるのでしょうか。
〇本田氏  今の60点の話ですが、60点取れば進級できるんですよね?(笑い)。優良可という言い方は、今はないかも知れませんが、可でも進級出来ますし、最終的には卒業できます。優ばかりでなくて可で卒業出来ます。だから「優を取ろうとばかりするな、可でも良いんだ」ということで前に進む。今日は遠野市の職員も来ていますが、そうなると60点という部分で物を考えてしまってそれ以上詰めることをしない。情報も足らない。すると職員から「だって市長は60点でいいって言ったじゃないですか」と言われることがあります。それに対して「いや違う。もう少し勉強しろ」というわけです。「大学の先生とかそれぞれの関係者、企業の方からアドバイスを貰って80点90点の答案用紙を作れば市民の皆さんは、『あ、なるほど』ということになる。そういうプロセスを60点と言っているんだぞ」と。「最初から60点で良いということではないんだ。60点の叩き台が出来たら、産学の連携の中でそれを80点にする。すると市民の皆さんは『さすがだね』ということになるんじゃないかな」と。そのプロセスを言っているんですけれどね。
〇岩渕学長  重要なのは、若い世代が取り組む際にはスタート時点で60点でも良いと思う。その後に実践を通して更に上を目指す。そこには「最初は60点でもいいから頑張れ」と言うリーダーがいないと、やっぱり60点で止まってしまうのではないでしょうか。地域を変えていくためには、新しいシステムを作り上げていくリーダーもいないといけない。若い人ばかりでやったって、なかなかシステマティックに動かないと思う。だからリーダーも変わっていかなければならない。
〇本田氏 そうですね。