年度別インデックス

外部有識者と学長との対談


人づくり、地方イノベーションの推進のため地域の魅力をどう高めていくか

〇岩渕学長  やはり自分の中に外の意見が入ってくることによって、自分たちの社会的価値の意味づけを自分たちで理解していく。自分たちで行うとルーチンワークで終わりだけど、外から指摘されることで改めて自分たちが進むべき道とか、やっていることの誇りとかが理解できることもある。
  一つ市長に聞きたかったのは、先ほど講演で「遠野の幸福度」と書かれていましたが、具体的にはどのようなものでしょうか。
〇本田氏  もう7~8年前ですが、「市民所得を増やすためにはやはり産業振興だ。雇用をしながら収入を増やしていかなければならない」と、酒を飲みながら職員と議論していたら、ある職員に「いや、所得向上は勿論大事だけれど、市長、心の所得を増やすということも大事にしませんか」と言われたんです。心の所得を増やす。それがまさに幸福度。
〇岩渕学長  私も県の委員会のメンバーですが、要は、地域を創生していくという意味では、やはり人がその地域を愛さなければいけないわけです。いくら収入があったって地域を愛さなければ腰掛け的になるわけだから、やはり自分たちがこの地域に住むという誇りを持つということが幸せ度の向上ということに繋がるだろうと思います。そこは我々もCOCとかいろいろと事業をやりながら地域定着を目指していますが、よく学生に「私は青森県出身ですが、岩手県に就職しなければいけないんですか?」と質問されます。私は「青森は青森なりの地方創生をやらなければならない。岩手をフィールドにして地域を知るというプロセスを理解してもらい、青森に戻って青森で活躍すれば、別に我々はこだわってないよ」と答えます。まあ岩手出身者は残したいという思いはありますけれど。そういった意味で人材育成で地域創生を目指そうと言った時に、どうやってそのマインドを学生に醸成させるかが重要です。
〇本田氏  マインドですね。
〇岩渕学長  マインドをどう変えていくかということ。劣等感で「しようがないから俺の立ち位置として遠野に住んでいる」というのではなくて、「やはり遠野に住むことが東京より価値がある」ということ。価値観づくりを教育の中でやっていかなければならないと思っていますが、坂本課長その辺は如何でしょうか。人づくり・地方イノベーションをやるために志のある人材をどう育てていくか。
〇坂本氏  地域を発展させる。例えば地域の魅力をどう高めていくか、発展の阻害要因は何かというと、現場の方々、それに取り組まれている方々、行政でも事業者の方でも分かっていらっしゃると思います。みんな試行錯誤している。それぞれ状況が違う。人の能力の問題かも知れないし、リソースの問題かも知れない。そういう時にどういうアプローチが適切かというのを、ある程度分析的に考える。そういったちょっとしたツールと使える知識、あとはやる気ですよね。そういうものを持った人材を大学は送り込んで、それを指導する先生も送り込んで現場の方々と一緒にやる。課題解決に取り組む。そういう実践。それが岩手大学三陸復興・地域創生推進機構がこれまでされてきたことでもあると思うのです。そういった所をもっと若い人が、さっき市長がおっしゃった先見性であり、行政・政府が、それを重視するというところにも繋がってくると思います。文科省の中でも反省するところがあるのですが、ある意味泥臭いと思われているテーマって、もはや現場の人に任せておけばいい、という所があって、それがボトルネックになってしまう訳ですが、そうではなく、何かしら新しい切り口、本田市長がさっきおっしゃった新しい切り口ということになるかと思いますが、そういう切り口を構想する知識と学問的なツールというような形で与えていく。そこに新しい世界が開けるし、人を豊かにする。そういう営みをエンカレッジして、またそういう営みを褒めて、それがさらに学問的に「あ、俺たち新しい流儀をつくっているじゃないか」「新しいツールを実証したじゃないか」というような形でサイクルとして回していける。これが大事だと思います。そういう仕組みを作っていけばもっともっと大学は地域と密接に繋がって地域を発展させる若い人材を供給できるようになるのではないかと思っています。
〇本田氏  市町村という現場の中にあって、住んでいる人が「うちの市は、うちの町は、うちの村は」という誇りを持っていなければ魅力ある自治体とは言えないと思います。だから交流人口を定住、移住にシフトさせたい場合には、やはり受け入れる我々の方が自信や誇りを持たなければいけない。その自信と誇りをどう持たせるかは、実は若い方々・学生さん方の力というのは大きいんですよ。特にお年寄り達のいる所を見ると「孫が帰ってきた」という形で受け入れる。「じいちゃん、ばあちゃん」と言いながら、じいちゃん・ばあちゃんの力を引き出してくれる。そういう高齢者の力を引き出す若い方々の力というのはものすごくあります。だから学生のパワー、若い方々のパワーをどのように我々が受け入れながら、それを魅力に繋いでいく仕組みに持っていくかがすごく大事。そうなると一つの教育ということに繋がっていくんじゃないでしょうか。