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外部有識者と学長との対談(H28.06.05)

外部有識者と学長との対談(※H28.06.05)

これからの地方創生と大学に期待する役割

「震災復興・地域創生」、「イノベーション創出」、「グローバル人材育成」をキーワードとした学部改組を始め、岩手大学は2016年に開学以来最も大きな大学改革を行いました。第3期中期目標・中期計画期間である新たな6年間がスタートした今年度、地方創生と大学に期待する役割をテーマとし、増田 寛也様と学長との対談を行いました。

開催日時: 2016年6月5日(日)16:10〜16:40
場所: 岩手大学北桐ホール
テーマ: 岩手大学開学記念行事「これからの地方創生と大学に期待する役割」についての対談
出席者: 野村総合研究所顧問、東京大学公共政策大学院客員教授 増田 寛也 様(前岩手県知事、元総務大臣)
国立大学法人岩手大学学長 岩渕 明

出席者紹介

  • 高橋真裕

    増田寛也

    野村総合研究所顧問、東京大学公共政策大学院客員教授(前岩手県知事、元総務大臣)

  • 大平尚

    岩渕明

    国立大学法人岩手大学学長


外部有識者と学長との対談(※H28.06.05)

地方創生と大学の役割(1)

岩渕学長

ご講演ありがとうございました。今回の対談ですが『徹子の部屋』をイメージした対談を考えていますが、シナリオは一切ありません。

まず、新しい地域を創る中で人生観を変えて行かなければならないと思っています。東京一極集中が今でも続いている中で若者がどのように地方で生活していくのか、子ども、社会、政治、経済、産業界様々な問題がありますが、言うことは簡単でも人の意識を変えるには20年かかります。文部科学省のCOC+事業で10%地元定着率を上げようといっても中々難しいところもあります。教育機関として地域創生を行っていくことは分かりますが、地元に残るためにはどういうことをするのが必要かといった点が、外から見て欠けているのではないかと思っています。

急に難しい話で申し訳ありません。

増田氏

たぶんそのような話を聞かれるのではと思っていました。(笑)

なぜ、若者は東京に行くのか、複合的な理由はあると思いますが、私が思うのは経済の量を重視して質を見ていない、あるいは給料の金額だけを見て、本来重要な可処分所得を見ていないと東京が良く思えるし、東京に行くと就職に有利というのもあると思います。「就職先に給料の高い」「将来の保障に繋がる」「大企業」といった考えを変えられるのかが大きいと思います。まず、そこをどのように変えていくのかが一つやらなければならないことではないでしょうか。今の大前提が的外れでは、やっていることが無意味になってしまいますので、人生観を変える、価値観を変えると言っておりましたが、大事なことは、まず地元企業が成果を上げることと、そこに岩手大学が優秀な人材を送り込むことで地域に貢献することが大学の役割ではないでしょうか。

国の方で新たな地方創生事業が行われますが、東京にいる地方から来た学生が地元企業の情報が無いというので、夏季休業期間などを利用して長期間地元企業でのインターンシップを実施し、それを大学の単位として認めてもらう制度が作られる予定です。それと同時に東京に行かなくても地元で充分学べる仕組みも必要だと思っています。地元企業に大学生の視線が集まる仕組みをシステム的に制度化できればとは思います。

岩渕学長

岩手県では県の総合計画の中に「幸福度」の検討の項目があります。2年前に高校生に講演した際に、「岩手は日本のチベットから日本のブータンに変わろう」と話したら高校生は誰も分からなかったのですが、東京から来た人がもう一回住みたい街に、岩手は高いランクでノミネートされています。そういうことを考えると生活していく中での幸福とは何か、可処分所得のほかに、自然、環境といった部分を加味して「幸福度」を表すのか、今後それを地方が提示していく必要があると思います。経済的な部分と充実感をどのように表すのか、各地方でそれぞれ指標は異なるものになりますが、どのように考えますか。

増田氏

数値化して可視化する、数値化してその良さを知るということが必要ですが、可処分所得であれば数値化しやすいし、東京よりも高くなると思うのですが、幸福感、充実感を数値化するのは中々難しいと思います。日本は、人が集まるようなものに関しては様々な数値化を行ってきているが、減る、分散するといったことはマイナスに捉える傾向にあるので、ムダがかえって幸福を呼ぶといったことを数値化ができない。すぐに答えは出ませんが、例えば、一日の時間はどんな人でも24時間あるわけで、その中で個人が自由にできる時間はどれくらいか。睡眠時間は個人でコントロールできるが、雇用関係にあればその時間は自由にならないし、通勤時間や家族と親しむ時間、スポーツを楽しむ時間など時間を調べていくこと、多様な尺度を打ち立てることが必要で、今までそういう点が欠けていたのではないかと思います。イメージではなく、可視化することが欠けていたのかと思います。

岩渕学長

文化の継承について、宮古市田老の方に聞いたことがあるのですが、過去に大津波が発生した都度、多くの方が亡くなっていますが、5年後には人口が戻ってくるそうで、理由として雇用があるからではなく、守るべき家族やお墓があるというので戻ってくる。仕事が無いと来ないというが、基本となる文化が無いと人を寄せ集められなくなっていると思うのですが。

増田氏

サケは何年か経つと生まれたところに戻ってくる習性がありますが、確かに生まれたところ、高校までに育った場所が持つ、自分を育ててきてくれた蓄積は大きいと思います。田老に戻ってきたというのも、街がぐちゃぐちゃになって仕事は無くなったかもしれないけれども、みんなが戻って生活することで新しい仕事が生まれたということがあったのではないでしょうか。「ふるさと」という概念が薄れてきているのは、今は情報がものすごく多くなって、東京や世界のことも入ってきているので均質化してきている。県人会の集まりを見ても高齢化していて、若者が来ない。一方で若者の繋がりはインナーサークル化してきている。今はメールアドレスが分からなくても、LINEグループでの繋がりになっている。これからは、新しい繋がりを探し出す、作り出すことが大事な命題になっていくのではないでしょうか。国土利用が一部に偏っている、東京だけに人が集まっている国というのは世界を見てもそんなに無いわけで、生活をするのに東京に行かなくても良くなってきている時代になったと思います。

外部有識者と学長との対談(※H28.06.05)

地方創生と大学の役割(2)

岩渕学長

最後になりますが、国会議員や経団連のお歴々に国立大学ではこんなことをやっていると説明すると「国立大学は遅れている」「もっと改革しなさい」と言われます。自分たちは法人化以降、常に改革、改革で、安定していない。これ以上何を改革すれば良いのかというのがホンネですけれども、学長のリーダーシップを発揮して、各学部を大学のベクトルにあわせたりする必要はあるのですが、多様化というのも一つの大学の道で、多様化すればするほど、意見の調整に時間がかかる。フォーラムで経団連の永里さんからは「リーダーシップが一つもありませんね」と言われてしまいましたが、増田さんから見て一般論として大学はどうあるべきか、岩手大学はどうあるべきかお聞かせいただけますか。

増田氏

今大学だけではなくて、経済界を見てもコーポレートガバナンスばやりと感じます。ガバナンスをどう強化するかといった議論ばかりですね。一番大事なことは、学生や研究対象と接する時間を多く取ることでその成果を出していくことだと思います。ただ、国からの予算が減り、成果に対し重点配分する方向のため、ガバナンスということが出てきているので、民間企業もですが、行き過ぎのガバナンス改革が違う方向に行ってしまうと目先の成果だけにとらわれてしまうのではないかと。長い目で見る必要があって、かたちだけ変えるのではなく、狙いは何なのかといったところまで考える。必要なのは、いろいろな経験やバックグラウンドを持った人達がそこに参加することでプラスに働いて、閉じられた中での議論は気がつかないところも出てきます。一般論ですが、異文化とか異分野の人が入ることで化学反応が起き、物事が変わっていくことが大事という話もあります。かたちだけ整えることが良いとは思っていませんが、バックグラウンドが異なった人が中にいることで、全体的に見て公平性が出てくるというのはあるのではないでしょうか。岩手大学が閉じられた中でやってきたのかどうかは、私は判断できませんが、岩渕学長の言われるとおり多様さを持ち込んで議論することは必要だと思います。

(質問)
質問者1
(小学生)

僕は地域おこしの研究をしています。僕の住んでいる紫波町も人口が減っているのですが、何をして生活していけば良いのでしょうか。

岩渕学長

地域の活性化をするのであれば、大学に入って勉強して専門性を付けることが重要です。農業や工業、学校の先生、公務員、様々な選択があるけども専門性を持って、地域のリーダーになるようなことをすれば良いのかな。

増田氏

紫波町にはオガールがありますけども、全国的に注目されている施設、仕組み、成功例として挙げられている。オガールがどういうところから創ろうという話になったのか、予算はどうなっているのかといったところを地元の関係者に聞いてみると、地域創生の勉強になると思います。それと合わせて環境にも力を入れているので、例えば堆肥を作るための施設や循環型の社会を創るために努力してきたところなので、環境のことも合わせて学ぶのも良いかもしれませんね。地元には様々な取組があるので、なぜそのような仕組みにしたのか、どのように実行したのかというのを調べるのが今後に繋がっていくのではないでしょうか。

質問者2

今まで岩手の農業は世界に打って出るだけのものを生み出していない。それは岩手大学が岩手の農業への貢献が不十分だったからじゃないかと思っており、寂しい気持ちです。地域に密着して、10年、15年経っても良いので、岩手の農業はすごい、大学はありがたいとなって欲しい。そうすれば地域の子どもたちが岩手大学で学びたいとなると思います。岩手大学には一次産業に具体的に貢献できる取組をお願いしたい。

岩渕学長

岩手大学のオリジンとして盛岡高等農林がありますが、そのオリジンが地域の農業をどうするかですが、農学部の研究がアカデミックに偏っていた、大学がアカデミックであるのは当然のことで、でもじゃあその成果はどうするのということになるのですが、岩手大学は地域を先導すると言っているけどもどう先導するのかということを岩手銀行の高橋会長にも言われたのですが、やはり一次産業だよねと。一次産業を引っ張っていく姿勢が岩手大学に見えないと言われました。研究のネタをどのように実用化していくのか、岩手の農業をどのように変えていくのか、岩手の農業を変えることで日本の農業を変えていくといった気概を持ちましょうと言っています。そうすれば、子どもたちにも夢が与えられ、農学を勉強したいとなっていくのかなと。今そのように進めています。

増田氏

産業として見たときの担い手が高齢化していて、後継者が少ない。親が子どもたちに継がせるのは不安だということと、子どもからは親の姿を見てあそこまで苦労しているところに入っていくというのに閉塞感を感じています。農業は地方創生の事業でいうとど真ん中の政策で、これが日本の中で絶やされるというのは耐えられないことですし、国際的評価を見れば、安全度の基準が厳しい中で出てくるものですからステータスにもなっている。産業として後継者を繋いでいく仕組みにすることが急がれますし、十勝に行くとかなり後継者がいるのですが畑が無いと言っている地域もあります。気候変動によって地域で取れる作物も変わってきているので、岩手にとっても一つのチャンスだと思います。国でも一次産業に対する太い政策を出して欲しいと思いますし、地域を緑で維持していくうえでの農業の役割を評価した政策が行われ、人材育成とマッチさせる必要があるのかとは思います。

質問者3

大学というのは個人個人に個性を活かして勉強させることを志していると感じました。だから岩手大学は就職率も高い。そして就職先を辞めることも無いと繋がっていく。これを全国規模で行えば日本は本当に良い将来が開けていくのではないかと思いましたが、私のこの考え方は間違っているのかどうか教えていただければと思います。

岩渕学長

現在約50%の大学進学率で、専門学校を含めると78%くらいですが、私のころはトータルの進学率が25%くらいでした。昔は社会が寛容であって、18歳でいろいろな能力を持っている学生が個性を伸ばすことができた。今は時間割も埋まっていて、一所懸命勉強して、社会に出れば即戦力にならなければならない。自由度が無くなってきている。岩手大学では学生の課外活動の所属が6割くらいあって、活動を通して、先輩後輩の関係や地域との連携をしながら社会勉強をする。私からするとそれが当たり前ではありますが、対外的に見ると岩手大学の特徴だねと言われます。即戦力ではなくて、人間の成長に合わせて何をするのかということをもう一度考える必要があります。まさに教養教育をどうするのかというのが大学に問われていますので、人間の成長のために、我々は環境を用意していきたいと思っています。

外部有識者と学長との対談(※H28.06.05)