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【研究紹介】微生物のちからを借りた環境低負荷なものづくり

掲載日2020.11.24


山田先生顔写真.jpg

農学部 応用生物化学科  
准教授 山田 美和
【応用微生物学】

  • 山田先生.png

私たちの身の周りの便利な製品の多くがプラスチックなどの石油を原料とした化学合成品であることは、みなさんもよくご存知だと思います。一方で、既存の合成法では、石油資源の枯渇や使用後のプラスチックによる環境汚染や二酸化炭素の増加など、地球環境へ負荷を与えてしまうことが世界的に懸念されており、新しい環境低負荷な物質生産法が求められています。これらの問題を解決するためのひとつの対策として、微生物や生体触媒である酵素を利用した「ホワイトバイオテクノロジー」による物質生産法に期待が集まっています。私たちの研究室では、「微生物の力をかりて、環境に優しい新技術を構築・開発する」ということを目指して、様々なテーマに取り組んでいます。

廃棄海藻を原料とした微生物によるバイオプラスチック合成

微生物の中には、栄養飢餓状態になると細胞内にバイオプラスチックであるポリヒドロキシアルカン酸(PHA)を蓄積するものが存在していることが90年程前から知られています。このバイオプラスチックを合成する微生物は、植物由来の糖や植物油をエサとして生育しますので、プラスチックの原料が従来のような有限な石油ではなく、植物などの生物資源を原料とすることができます(図1)。また、微生物が合成するPHAは、高い生分解性を有していますので、使用後は環境中の微生物に分解され、水と二酸化炭素まで完全に分解されることが確認されています。分解によって生じた水と二酸化炭素は再び原料となる植物の生育に利用されることができます。また、PHAは海の環境中においても完全に分解することがわかっている唯一のバイオプラスチックです。このように、海洋環境中でも完全に生分解されるPHAの応用は、海の生態系に悪影響を与えているマイクロプラスチック問題の打開策としても期待されています。

  • 図1.png図1 微生物がつくるバイオプラスチックによる炭素循環イメージ


これまで多くの研究は、植物を原料としたバイオプラスチックの微生物合成を目指しているものでしたが、我々は、三陸の海で豊富に得られる食用以外の海藻類や加工後の廃棄海藻部分を原料としたPHAの微生物合成を目指しています。しかし、海藻成分を効率よくPHA合成に利用できる微生物の報告はほとんどなかったため、自然界からの微生物探しにチャレンジし、新たな微生物を複数株見出すことに成功しました(1,2)(図2)。実用化には、解決しなければならない課題が山積みですが、三陸地域に貢献できる新たなものづくり技術を完成させるために、日々研究を進めています。

  • 図2.png図2 海藻成分を「エサ」として食べ、微生物が細胞内にプラスチックを蓄積する

産業廃棄物の成分を原料とした微生物酵素による有用有機酸合成

有害物質による環境汚染問題もまた重要な課題ですが、自動車のロングライフクーラント(LLC)や不凍液の廃棄による環境汚染については、これまであまり重要視されてきていませんでした。しかし、自動車の大量消費や暖房器具の普及にともない、LLCや不凍液の廃棄量は莫大な量となっています。そして、その大半は希釈されるだけで環境中に放流されていると言われています。私たちは、処理が課題となっている廃LLCや不凍液の主成分であるエチレングリコールを、環境浄化の観点から安全に処理だけではなく、微生物酵素を用いることで医薬品や化成品原料となる有用な有機酸の生産に活用することを目指しています。目的の酵素反応を進めるために最適な酵素を産生する微生物を発見し、現在は遺伝子組換え技術等を利用して、酵素の能力を強化させています(3-6)。また、ターゲットとしている有機酸類は、工業的には現在、主に化学合成によって生産されていますが、化学合成法では高温高圧条件下での反応や、酸類のような有害物質が必要であるため、環境負荷や酸の中和処理等のためのコストが問題視されています。我々が目指す酵素を利用した反応が可能となれば、これらの問題も解決できる可能性があるのではないかと期待しています。

これらの研究の他にも、新しい性質を持つ微生物や微生物酵素を探索し、その特性を活かした技術開発に関わるさまざまな研究も行っています。
詳しくは下記URLにあります研究室オリジナルHPをご覧ください。

http://appl-micro.agr.iwate-u.ac.jp/index.html

【参考文献】
1. M. Yamada et al., Fisheries Science, 84, 405-412 (2018)
2. H. Moriya et al., Frontiers in Bioengineering and Biotechnology,8, https://doi.org/10.3389/fbioe.2020.00974 (2020)
3. M. Yamada et al., Journal of Molecular Catalysis B: Enzymatic, 105, 41-48 (2014)
4. M. Yamada et al., Journal of Bioscience and Bioengineering, 119, 410-415 (2015)
6. K. Matsumura et al., Journal of Bioscience and Bioengineering, 128, 13-21 (2019)