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【プレスリリース】小胞体ストレスにおけるミトコンドリア内カルパイン-5の活性化機構を解明-アルツハイマー病などの神経変性疾患治療薬の創出への期待-

掲載日2021.3. 3


概要

岩手大学理工学部化学・生命理工学科生命コースの尾﨑 拓 准教授と弘前大学大学院医学研究科分子生体防御学講座の伊東 健 教授らの共同研究チームは、ミトコンドリアに存在するカルパイン-5が小胞体ストレスに応答して活性化することを明らかにしました。

本成果により、ミトコンドリア内のカルパイン-5の活性化機構が解明されたことから小胞体ストレスに関連するアルツハイマー病をはじめとする神経変性疾患等の治療薬の創出が期待されます。

本研究成果は、令和3年2月16日にオランダの国際学術誌Biochimica et Biophysica Acta - Molecular Cell Research誌で公開されました。

研究成果

本論文では、ミトコンドリアに存在するカルパイン-5が小胞体のストレスに応答して活性化していることを世界に先駆けて報告しました。小胞体ストレスは、アルツハイマー病やパーキンソン病をはじめとする神経変性疾患、肥満や脂質異常症を含む代謝関連疾患、糖尿病、がん等に深く関与しています。今回の発見から、将来的に低分子化合物等によってミトコンドリアのカルパイン-5の活性を調節することで、アルツハイマーなどの小胞体ストレス関連疾患を治療できることが期待されます。今後、岩手大学、弘前大学の共同研究チームは、ミトコンドリアのカルパイン-5を有効な新規治療標的として創薬研究へ展開したいと考えています。

細胞内では、細胞小器官である核や小胞体、ミトコンドリアなどが細胞の生存に必須の働きを担っています。また、細胞内のタンパク質には、細胞の形成など様々な役割のタンパク質がありますが、カルパインファミリーに分類される15種類のタンパク質は細胞内のカルシウムイオンに応答して様々な細胞機能を調節している酵素タンパク質です。尾﨑拓准教授らは以前、眼の網膜においてカルパイン-5が細胞質だけでなく、ミトコンドリアにも局在していることを発見しました【Biochemical and Biophysical Research Communications, 504, 454-459, 2018】。一方、ミトコンドリ内でカルパイン-5がどのような機能を担っているのかはこれまで未解明のままでした。本研究では、ミトコンドリアでのカルパイン-5の酵素学的性質を調べた結果、ミトコンドリアのカルパイン-5は細胞質のカルパイン-5と比べて、より低濃度のカルシウムイオン濃度で活性化することが明らかとなりました。さらに、小胞体ストレスの初期段階で、低濃度のカルシウムイオンが流出することにより、ミトコンドリアのカルパイン-5が活性化していることを明らかにしました。これらの発見により、これまで小胞体ストレス疾患の原因究明において、細胞質のカルパイン-5のみが注目されていましたが、ミトコンドリアのカルパイン-5が深く関与している可能性が見出されました。従って、本論文は、アルツハイマー病などの神経変性疾患治療薬の創出への大きな可能性を示すとともに、カルパイン-5の基礎研究にパラダイムシフトを巻き起こすものと捉えています。

  • 図.jpg

    小胞体ストレスにおけるミトコンドリア内のカルパイン-5の活性化機構

掲載論文

題 目: Characterization of mitochondrial calpain-5
著 者: Yusaku Chukai(忠海 優作, 岩手大学理工学部化学・生命理工学科生命コース4年・尾﨑拓研究室), Takeshi Iwamoto(岩本 健, 岩手大学大学院 総合科学研究科理工学専攻2年(当時)・尾﨑拓研究室), Ken Itoh(伊東 健, 弘前大学), Hiroshi Tomita(冨田 浩史, 岩手大学), Taku Ozaki(尾﨑 拓, 岩手大学)
誌 名: Biochimica et Biophysica Acta - Molecular Cell Research
公表日: 2021年2月16日