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【研究紹介】エチオピア在来イネの穂ばらみ期耐冷性の基準策定 -アフリカの農業現場の最前線で「寒さに負けない」持続可能な食料生産に貢献-

掲載日2021.3.26


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農学部 植物生命科学科 
教授 下野 裕之
【作物学】

  • 下野先生2.png

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農学部・植物生命科学科の下野裕之教授、エチオピア国立イネ研究センターのHabtamu Assega Alemayehu研究員、岩手生物工学研究センターの阿部陽研究員らの共同研究チームは、エチオピアに導入されている在来イネ18品種について、穂ばらみ期耐冷性を評価し、基準品種の策定を行いました。本成果は、エチオピアにおけるイネ育種の基盤情報として今後の新品種の育成につながることが期待されます。アフリカの農業現場の最前線で「寒さに負けない」持続可能な食料生産に岩手大学は貢献しています。

本研究成果は、令和3年3月1日に国際学術誌Field Crops Research誌で公開されました。

研究成果

本論文では、冷害が問題となっているエチオピアにおいて、耐冷性品種育成の基礎となる基準品種の策定をはじめて行いました。本研究成果をもとに、エチオピアとの共同研究を活発化させ、エチオピアに適した品種の育成など国際共同研究をさらに展開したいと考えています。

アフリカ大陸東部に位置するエチオピアは、国土の大部分がエチオピア高原を中心とする高地であり、亜熱帯原産のイネの栽培において低温による障害が問題となっています。イネの低温に対する感受性は、生殖成長期の穂ばらみ期に特に高く、この時期に低温に遭遇すると花粉形成が阻害され、不受精を原因とする甚大な収量低下に見舞われます。その被害を防ぐ1つの手段として、穂ばらみ期(補足1)耐冷性の強い品種の育成があります。

しかし、エチオピアでは穂ばらみ期耐冷性の検定を行う施設がなく、品種の耐冷性が不明なままイネ栽培が拡大している状況でした。

本研究では、岩手大学と岩手県農業研究センターが保有する精密な恒温深水法(補足2、補足3)による検定装置を用い、エチオピアの在来18品種の耐冷性を日本の基準品種(耐冷性が極強の「ひとめぼれ」と弱い「ササニシキ」)と比較評価しました。その結果、エチオピア在来品種の耐冷性に大きな変異があり、最も強い「Andassa」と「Tana」は「ひとめぼれ」と同程度の耐冷性を持つこと、最も弱い「Fogera2」と「Getachew」は「ササニシキ」と同程度の弱い耐冷性を持つことを明らかにしました(図1)。また、特別な設備や機器を用いず、通常の野外条件で栽培したイネの開花直前の葯の長さと、低温処理したイネの稔実歩合との間に有意な相関関係を見出し、葯長の遺伝的要素が耐冷性の簡易的な指標となることを明らかにしました。このことは、より多くの遺伝資源を対象に葯長を指標としたプレスクリーニングを行うことで、特別な設備がなくても有望な遺伝資源を抽出できる可能性を示しています。これら知見は今後のエチオピアでのイネ生産の安定化に寄与する成果に位置付けられます。

  • エチオピアイネ.png

図1 エチオピアのイネ品種の穂ばらみ期耐冷性
白抜きが耐冷性検定なし、黒が耐冷性検定あり、下の数字は耐冷性ランク(強いほど大きい数字1~6)を示す

  • 20190919 農家(写真1).jpegエチオピア訪問時の農家との懇談の様子(2019/9/19)
  • 写真2.JPGエチオピア研究者へのサンプリング法の指導の様子

    左からTilahun Tadesse研究員(第4著者)、下野教授、Habtamu Assega 研究員(筆頭著者)
  • 図1穂ばらみ期.png

補足1 穂ばらみ期は,イネの開花10~12日前の花粉形成が活発な時期で,最も低温に感受性が高い



  • 図2恒温深水法.png補足2 恒温深水法(岩手大学)
  • 図3恒温深水法.png補足3 恒温深水法(岩手県農業研究センター)

掲載論文

題 目: Genotypic variation in cold tolerance of 18 Ethiopian rice cultivars in relation to their reproductive morphology
著 者: Habtamu Assega Alemayehu(岩手大学大学院総合科学研究科2年(当時)、エチオピア国立イネ研究所)、 Gibrilla Dumbuya(岩手大学大学院連合農学研究科2年、シエラレオネ国立農業研究センター)、 Md Mehedi Hasan(岩手大学大学院連合農学研究科2年)、 Tilahun Tadesse(エチオピア国立イネ研究所)、 Shinsuke Nakajyo(仲條眞介、岩手県農業研究センター)、 Tomoaki Fujioka(藤岡智明、岩手県農業研究センター)、 Akira Abe(阿部陽、岩手生物工学研究センター)、 Maya Matsunami(松波麻耶、岩手大学)、 Hiroyuki Shimono(下野裕之、岩手大学)
誌 名: Field Crops Research
オープンアクセス:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0378429020313265
公表日: 2021年3月1日