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【プレスリリース】「咀嚼、嚥下、呼吸の協調」に着目した 高齢者用食事見守りシステムの開発を開始 - 岩手大学、東京医科歯科大学、長崎大学、タカノ㈱ の間で共同研究契約を締結 -

掲載日2021.7.30


概要

近年、誤嚥性肺炎や窒息によって亡くなる方が増えています。これは、食べ物を噛む力(咀嚼機能)や、食べ物を飲み込む力(嚥下機能)、さらには、息を吸ったり吐いたりする力(呼吸機能)が加齢や疾患によって低下し、各機能の協調がうまく働かなくなることが大きな要因と考えられています。この問題は、高齢化が進む我が国において、今後ますます深刻化することが予想され、早急な対応が必要です。
このような背景の中、岩手大学理工学部佐々木誠准教授らの研究グループでは、文部科学省地域イノベーション・エコシステム形成プログラム(基盤構築プロジェクト)等によって、前頸部生体信号を利用したAIベースの嚥下機能評価技術や、耳周辺の生体信号を利用した咀嚼・嚥下の検出技術の開発を進めてきました。

これらの成果を社会に還元することを目的とし、岩手大学、東京医科歯科大学、長崎大学、タカノ㈱の間で、耳に装着する小型・軽量な食事見守りシステムを開発・実用化するための共同研究契約を締結しました。
本共同研究は、(公財)JKAの研究補助を活用して実施するものです。

【背景】

近年、誤嚥性肺炎によって亡くなる方が増えています。これは、食べ物を噛む力(咀嚼機能)や、食べ物を飲み込む力(嚥下機能)、さらには、息を吸ったり吐いたりする力(呼吸機能)が加齢や疾患によって低下し、各機能の協調がうまく働かなくなることが大きな要因と考えられています。誤嚥性肺炎による死亡者数は年々増加する傾向にあり、令和元年においては日本人の死因第6位と、主要な死因の一つとなっています。この問題は、高齢化が進む我が国において、今後ますます深刻化すると予想され、早急な対応が必要です。

また、窒息によって亡くなる方も依然として多く、近年では交通事故による死者数の2倍近くとなっています。

  • 図1.png図1 誤嚥性肺炎による死亡者数の年次推移
  • 図2.png図2 誤嚥性肺炎による死亡者数の年次推移予測
  • 図3.png

    図3 不慮の窒息及び交通事故による死亡数推移(人口動態推計より岩手大学作成)

介護労働者・介護現場のマンパワー不足が慢性化し、個々人の嚥下機能や体調に適した食事を提供し、十分な栄養摂取ができているか、窒息や誤嚥リスクが高くないかなどを、つきっきりで見守ることは不可能であり、誤嚥性肺炎の発症や窒息事故に発展するケースも少なくありません。このことから、介護現場において食事動作の様子や変化を捉え、窒息・誤嚥を予防する新しい食事見守りシステムが求められています。

【研究内容】

岩手大学理工学部システム創成工学科の佐々木誠准教授らの研究グループは、文部科学省地域イノベーション・エコシステム形成プログラム(基盤構築プロジェクト)※1や科学研究費助成事業※2によって、前頸部生体信号を利用したAIベースの嚥下機能評価技術(特願2020-042502、特願2020-146438等)や、耳周辺の生体信号を利用した咀嚼・嚥下の検出技術(特願2020-154659)の開発を進めてきました。

これらの成果をコア技術として、耳装着型の小型・軽量ウェアラブルセンサを試作し、人工知能によって食事中の咀嚼、嚥下、呼吸の状態を見守る新しいシステムを開発します。

これまでにも、食事の見守りに利用可能なウェアラブル装置は開発されてきましたが、咀嚼のみ、あるいは嚥下のみの検出に限定されています。さらに、呼吸計測には、大掛かりな装置が必要なため、食事現場で利用するには不向きです。食べ物を噛んで安全に飲み込む動作は、複数の器官が協調して遂行されるため、それぞれの器官では機能不全を認めない場合でも、協調の問題が嚥下障害を引き起こす場合があります。咀嚼、嚥下、呼吸の協調はその代表例であり、これらをモニタリングすることは、誤嚥・窒息リスクの評価において極めて重要になります。

今回開発するシステムは、食事の妨げにならない程度の、小型・軽量なウェアラブルセンサを試作して、咀嚼、嚥下、呼吸の協調をモニタリングし、安全・安心な食の場を創生するものです。本事業では、医療機関における特別な検査環境ではなく、自宅等の普段の食事の様子から、高齢者の「健口状態」と「窒息・誤嚥リスク」を評価する、画期的な高齢者食事見守りシステムの実現を図ります。

そのため、嚥下機能評価技術の開発を進めてきた岩手大学(理工学部システム創成工学科佐々木誠准教授)、要介護高齢者の嚥下の問題について先進的な臨床研究を行っている東京医科歯科大学(大学院医歯学総合研究科戸原玄教授)及び長崎大学(長崎大学病院特殊歯科総合治療部・摂食嚥下リハビリテーションセンター玉田泰嗣助教)、医療福祉機器メーカーであるタカノ株式会社(本社:長野県上伊那郡宮田村、代表取締役社長:鷹野準)※3が共同研究契約を締結し開発を進めることで、高い技術を社会に還元し、健康寿命の延伸に貢献します。

                 

  • 図4.png
    表1 参画機関とその役割
  • 機関名 本共同研究における役割
    岩手大学 ・研究の総括
    ・人工知能を用いた咀嚼、嚥下、呼吸の協調解析
    ・食事見守りアルゴリズムの開発
    東京医科歯科大学 ・ウェアラブルセンサを用いた臨床評価
    長崎大学 ・ウェアラブルセンサを用いた臨床評価
    タカノ株式会社 ・ウェアラブルデバイスの設計・試作

本共同研究は、公益財団法人JKAによる研究補助※4(代表研究者:岩手大学佐々木准教授、2021年度交付決定額:1、500万円)を活用して実施するものです。