~研究心ニ 我ガ心ハ ムクムクトシテ~
鷹觜テル(1921~2000)は、江刺市(現・奥州市)に生まれ、岩手大学の前身の一つ岩手師範学校女子部(旧・岩手県女子師範学校)の教員となりました。そして、新制大学移行後に本学初の女性助教授となった、いわての女性研究者の先駆けです。没後20年にあたって行う鷹觜テル記念事業の一環として、2021年度以降の「岩手大学優秀女性大学院生学長表彰」の通称を「鷹觜テル賞」とすることになりました。
このページでは、鷹觜テルの業績、実験・調査の姿を紹介します。
1961年 | 「小児の毛髪中のシスチン含量に及ぼすビタミンA及びその他の影響」で岩手医科大学より医学博士号取得 |
1964年 | 『婦人労働構成が健康生活および育児に及ぼす影響について』(調査報告)岩手県教育委員会 |
1966年 | 『婦人の労働時間の季節的変動が食物摂取・健康等に及ぼす影響について』(調査報告)岩手県教育委員会 |
1974年 | 「僻地における食生活構造およびその改善に関する研究」で日本家政学会賞受賞 |
1980年 | 『人間と土の栄養学』樹心社 |
1994年 | 『長寿村・短命化の教訓 医と食からみた棡原の60年』(古守豊甫との共著)樹心社 |
1996年 | 『健康長寿の食生活 足で求めた人間栄養学35年』食べ物通信社 |
鷹觜テルは、広く人間の生活全般に立脚した食生活改善をめざし、「食物と健康との相関に関する研究」を学際的・総合的に追求しました。その傑出した研究成果の一つに、科学的分析に基づく児童・生徒の栄養状態の判定があります。これは、毛髪に含まれるある種のアミノ酸含有量により動物性タンパク質摂取の過不足がわかることを初めて明らかにしたもので、Nature誌に掲載されて国際的な学術成果として高い評価を受け、岩手医科大学から医学博士の学位を授与されました。さらに、この研究は児童・生徒の潜在的な栄養疾患の予測とそれに基づく栄養改善へと発展しました。
また、農村の食生活改善に関する研究に力を注ぎ、農村地域での綿密な疫学調査と動物実験を精力的に行い、食生活改善の実践から疾病が明らかに減少することを証明するとともに、農家の健康保持・増進に向けた農村独自の食農一体の食生活管理を提唱しました。この業績により、「僻地における食生活構造およびその改善に関する研究」で日本家政学会から学会賞を受賞しました(1974年)。加えて、栄養学・食生活に関わる多くの書物を著し、実践的な栄養科学を踏まえた食生活改善の啓発にも努めました。
このような「食物と健康との相関に関する研究」を通じた学術上の業績と地域社会への貢献により、栄養改善実施10周年記念表彰(厚生大臣、1962年)、産業教育百年記念表彰(文部大臣、1984年)を受けています。
以上のように、「世界」と「地域」の二つの舞台で活躍した鷹嘴テルは、岩手大学が創出をめざす「グローカルな人材」のパイオニアであり、その卓越した功績は永く称えられるべきものです。
Nature 192, 457–458(1961), published: 04 November 1961
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