2025.03.19
佐藤康毅さん(有限会社やまろく商店)|活躍する卒業生
本学卒業生 佐藤康毅さん
佐藤康毅さん
福島県出身。1987年、岩手大学農学部農芸化学科を卒業、1989年、岩手大学大学院農芸化学専攻を修了し、化学メーカーで農薬の開発や新規酵素の探索等に携わる。その後、有限会社やまろく商店(1912年に米屋として創業し、現在は、農業資材の販売、米の集荷販売、有機農業の推進、ライスセンター事業などを営む)に入社。2002年には、農家や一般の方が手軽に農業資材を購入でき、作った農産物を地元の人が購入できるよう「農家の店ファームランド やまろく」をオープンし、現在は二社の代表を務める。
心の拠り所としての岩手大学
私は人が多い場所が苦手なので、自然豊かで、心置きなく勉強できる岩手大学を志望しました。農業への憧れもあり、農芸化学科に進むことにしました。岩手大学の農学部は優秀な人がたくさん卒業しています。私自身もその一員になれたらいいな、という気持ちもありました。入学後、やりたかったことから離れていると感じて悩んだ時期もありましたが、研究室に配属されてからは研究に夢中になっていったのです。大学院にも進み、修了後は自分の好きな研究ができる企業を希望して、化学メーカーに就職しました。
岩手大学には研究に集中できる環境があります。人がのびのびしているところも好きです。私は今でも学生時代の仲間と電話で話したりします。今は福島に住んでいますが、何かあると岩手の仲間たちが教えてくれます。仕事でもわからないことがあれば、農業関係の研究をしている友人に連絡して資料などを送ってもらいます。岩手大学で私は得難い仲間を手に入れました。
大学生活で思い出に残っているのは、岩手大学合唱団に所属していた時のことです。夏には、泊りがけで地域の小中学校へコンサートに行く「演奏旅行」をしていました。お金もないので公民館などに泊まるのですが、地域の食堂や銭湯などで、学生だからとサービスしてもらったことなど、行く先々で親切にしていただいたことを懐かしく思い出します。卒業後、時間の経過とともに、多くの人に巡り合いながら、自分が岩手大学の卒業生らしくなってきたと感じました。学生時代は周囲がみんな岩手大生なので特別に意識することはありませんが、社会人になってから出身大学について話す機会があります。そんなとき、私にとって岩手大学とは何だったんだろう、いったい私は何を学び、大学はどんな人間になることを私に期待していたのだろう、そんなことを考え始めました。また、仕事で壁にぶつかったとき、心の拠り所のようなものが欲しいと思ったことがあります。そうしたときに、農学部の象徴のような存在である宮沢賢治なら、どのように問題を解決しただろう、と自分を宮沢賢治に置き換えてみました。先の見えない人生において、自分のバックボーンに戻って考えられるような、そんな理想像があることは幸せです。岩手大学で何を学び、学んだことからどのような答えを出すべきか考えるという繰り返しが、私を岩手大学の卒業生らしくしたのだろうと思います。
経済的な理由で修学が難しい学生を支援したい
小学校4年生の時、父が死にそうになったことがありました。奇跡的に生き延びたのですが、もし、父が助からなかったら、どうなっていただろうと考えることがあります。私は大学に行けなかったかもしれないし、今のような人生はなかったと思います。
若くして祖父が亡くなったため、祖母は父をはじめとする多くの子どもたちを女手一つで育てましたが、経済的に厳しく、その日の食べるものも大変という生活だったそうです。父は高等小学校を出てすぐに就職しました。父は優秀で一生懸命に働いたそうですが、学歴社会の風潮が強い時代だったので、昇進は難しかったと聞いています。そんな父は、子ども達には好きなように勉強させたいと思っていたのではないでしょうか。おかげ様で私は、苦労することなく学生時代を過ごすことができました。父の想いを引き継ぎ、受けた恩を次世代に返さなければいけません。経済的な理由で勉強が続けられないことは、悲しく悔しいことであり、この世界から少しでも無くす努力が必要です。勉強を続けたことで、世界に貢献できる人になる確率が高くなります。人類にとっての大事な芽を育てなければいけないと思います。これからも経済的な理由で修学が難しい学生がいれば、サポートしたいです。
学生時代、家からの仕送りがない同級生もいました。その点で私はとても恵まれていました。同級生が奨学金を返すように、私は寄附をしているだけです。寄附をするとモチベーションも上がります。「良いことをした」と自分を誇らしく思うと同時に、「これからも皆のためにがんばって働こう」という意欲が湧きます。できることはやらなければ、という気持ちで寄附を続けています。
これからの岩手大学には、未来が少しでも良くなるように取り組むことを期待しています。大きなことはできなくてもいいです。身近な人を幸せにできるような、そんな人が育ってくれればいいですね。危機的状況といわれる時代に、未来を良くできるかどうかは、みなさん次第です。応援しています。