絶滅危惧鳥類からツツガムシを発見

掲載日2026.07.27
最新研究

獣医学部
佐藤雪太
野生動物学、獣医寄生虫学

岩手大学獣医学部佐藤雪太教授らの研究グループは、独自の進化を遂げた固有種が生息する小笠原諸島の野鳥から、病原体媒介種も知られるツツガムシの一種を初めて発見しました。同諸島の絶滅危惧種であるオガサワラカワラヒワの他、メジロからも検出されたこれらのツツガムシは、鳥類を宿主とするToritrombicula属に分類されました。種同定には至りませんでしたが、本研究の成果は日本におけるツツガムシ類の分布に関する新たな情報を提供し、希少鳥種の保全における基盤的知見となるものです。


背景

ツツガムシは日本を含め世界中に見られるダニ類で、幼虫期にヒトを含む様々な動物に寄生し、ツツガムシ病の病原体を媒介する種もいます。日本列島の南約1,000kmにある小笠原諸島では希少種や移入種を含む独自の生態系が形成されている一方、外部寄生生物の記録は少なく、ツツガムシの記録もありませんでした。

研究内容

小笠原諸島の母島列島の4島(向島、妹島、姪島、姉島)で、野鳥を捕獲して外部寄生虫を検索しました。確認された寄生虫を形態学的に分類するとともに、DNAによる分子系統解析も試みました。

研究成果

オガサワラカワラヒワ2羽およびメジロ3羽から、ツツガムシ類が採取され、形態学的には鳥類に見られるToritrombicula属に分類されました。これは小笠原諸島におけるツツガムシの初記録となり、国内のツツガムシの分布に関する新たな知見を提供するものです。

今後の展開

今回の知見は、小笠原諸島における寄生生物相を理解する上で重要な予備的データとなり、今後の生態学的・疫学的な研究の発展が期待されます。本諸島では、イソヒヨドリやメグロにもツツガムシ類とみられる外部寄生虫が観察されており(私信)、ツツガムシ相をより深く理解するためにもさらなる調査が必要です。

【掲載論文】
題目:First record of chigger mites (Acari: Trombiculidae) parasitizing birds in the Ogasawara Islands
著者:Mizue Inumaru(犬丸瑞枝、国立感染症研究所 昆虫医科学部), Kazuto Kawakami(川上和人、森林総合研究所), Yukita Sato (佐藤雪太、本学獣医学部), Yukiko Higa(比嘉由紀子、国立感染症研究所 昆虫医科学部)
誌名:Journal of Veterinary Medical Science
公表日:2026年2月
DOI: https://doi.org/10.1292/jvms.25-0512

用語解説

  • ツツガムシ:
    世界で3,000種以上、国内では130種以上が確認されている外部寄生性のダニ類で、幼虫期に寄生してヒトを含む様々な動物にツツガムシ病の病原体(リケッチア、Orientia tsutsugamushi)を媒介する種が国内に分布している。
  • オガサワラカワラヒワ:
    世界で8亜種に分類されていたカワラヒワのうち、2025年に独立種として再分類された鳥類。現在は小笠原諸島の一部でしか見られず、推定生息個体数は400羽以下で絶滅の危険性が極めて高い(環境省絶滅危惧IA類および希少野生動植物種)。
  • 固有種:
    ガラパゴス諸島やハワイ諸島、今回の調査地の小笠原諸島など、大陸から遠く隔離された島嶼地域などで独自の進化により生じる種で、外来種の他、外来性の病原体の影響を受けやすく、ハワイ諸島の固有ミツスイ類では人為的に持ち込まれた鳥マラリア原虫などによる絶滅例が知られる。
本件に関する問い合わせ先
獣医学部共同獣医学科  佐藤雪太 
019-621-6165
yukita@iwate-u.ac.jp