
農学部
立澤文見
花卉園芸学
岩手大学農学部蔬菜花卉園芸学研究室では、チドリソウ(Consolida ajacis)園芸品種の花から3種類のポリアシル化デルフィニジン、シアニジン、およびペラルゴニジン3,7-配糖体、6種類のケンフェロール配糖体、ならびに2種類のカフェ酸誘導体を同定し、花色との関係を解明しました。本成果により、今後の新花色品種育成の効率化が見込まれます。
チドリソウ(Consolida ajacis (L.) Schur) は、キンポウゲ科コンソリダ属に属する一年生草本で、南ヨーロッパおよび地中海沿岸が原産地です。一般に「ラークスパー」や「ジャイアント・ラークスパー」とも呼ばれ、花卉園芸作物としても人気があります。コンソリダ属はかつてデルフィニウム属の一種とみなされていましたが、現在ではデルフィニウム属と近縁の独立した属として認識されています。
多くの青い花に含まれるアントシアニン色素の1つである「デルフィニジン」という名称は、コンソリダがデルフィニウム・コンソリダ(Delphinium consolida)として分類されていた当時の発見(1915年)に由来します。コンソリダに含まれるアシル化アントシアニンに関するこれまでの研究では、2分子のグルコースと2分子のp-ヒドロキシ安息香酸からなる化合物をはじめ、デルフィニジン3,5-ジグルコシド、 p-ヒドロキシベンゾイルカフェイルデルフィニジン3-グルコシド、およびポリアシル化デルフィニジン3,7-グリコシドなど、複数のデルフィニジン誘導体が報告されています。
コンソリダの花の青色化は、アシル化デルフィニジン配糖体とケンフェロール配糖体との間の分子間コピグメンテーションに起因することが知られています。さらに、コンソリダに含まれるポリアシル化デルフィニジン3,7-配糖体による分子内コピグメンテーションも青色化に関わっていることが知られています。
本研究では、これまでに報告されていない3種類のポリアシル化デルフィニジン、シアニジン、およびペラルゴニジン3,7-配糖体を同定しました。これらは複雑な化学構造のため、わかりやすく表現するために、デルフィニジン誘導体をコンソリニン、シアニジン誘導体をプルプロコンソリニン、およびペラルゴニジン誘導体をルブロコンソリニンと命名した。さらに、C. ajacisの花からは、これまでに報告されていない4種類のケンフェロール配糖体と既知の2種類のケンフェロール配糖体、ならびにカフタル酸およびファセル酸(カフェ酸誘導体)が単離されました。
コンソリダのvioletおよびpurple-violetの花において、主要なフラボノイドはポリアシル化デルフィニジン3,7-配糖体およびケンフェロール配糖体でした。これらの知見は、コンソリダの花の青みがかった色調に、分子間コピグメンテーションと分子内コピグメンテーションの両方が影響を与えていることを示しています。
ルブロコンソリニンは、red-purpleの栽培品種において主要なアントシアニンとして存在しました。プルプロコンソリニンも同定されましたが、この化合物を主要成分として含む栽培品種はなかった。その代わり、このアントシアニンはpurple-violetの花色の栽培品種における、わずかな赤色化に影響していました。
【掲載論文】
題目:Flower colors and flavonoids in the cultivars of Consolida ajacis (L.) Schur (Ranunculaceae)
著者:Chizuru Narita, Haruka Seto, Eri Ohama, Takayuki Mizuno, Tsukasa Iwashina, Fumi Tatsuzawa
誌名:Dyes and Pigments
公表日:Available online 22 July 2026
https://doi.org/10.1016/j.dyepig.2026.114041