
獣医学部
藤原 正俊
獣医公衆衛生学
獣医学部・大学院獣医学研究科の藤原正俊准教授らの研究グループは、確実にサルモネラを分離するための培養法を決定しました。
食中毒や家畜の下痢症が発生した際には、糞便、食材、環境材料等からサルモネラの分離を試みます。それにはサルモネラ以外の様々な細菌が混在する検体から、サルモネラを優先的に増やす選択培地が必要であり、より効率的で確実な検査法が求められます。
本研究では野外検体を用いて効率的で確実な検査法を実証しました。本成果により、サルモネラ分離率の向上が期待され、今後展開するフィールドワークを効率的に行うことができます。
人や動物に下痢等を起こす病原菌、サルモネラの検査法は百年以上の歴史があります。様々な選択培地が開発され、適切な培養条件も検証されてきました。選択培地は選択性が低いと他の細菌も増殖してしまいサルモネラが隠れてしまう、選択性が高すぎても一部のサルモネラは増殖できず分離できなくなる、という問題があります。確実にサルモネラを分離するには系統の違う複数の選択培地を用いることが推奨され、最適な分離法を決定することを目的に研究を行いました。
サルモネラ陰性の牛の糞にサルモネラを添加し、適切な培養条件を検証しました。その結果を基に、自然感染した実検体、鶏の肝臓、豚の糞、カラスの糞を用いて実証試験を行い、サルモネラ分離率を比較しました。
実証試験において、過去に我々が開発した選択培地「穿刺培養用半流動ラパポート培地」を用いると最も分離率が高くなりました。この培地は遊走性サルモネラの増殖の有無が一目瞭然であり、陰性の場合には分離用の寒天培地への継代を省略することができます(下図参照)。しかし、一部のサルモネラは本培地で遊走せず分離することができませんでした。2番目に分離率が高かった選択培地は「テトラチオネート培地」で、この培地では上記の遊走しないサルモネラも分離することができました。さらに、テトラチオネート培地での培養法について、これまで報告されている検体の接種量と培養時間を変更することにより分離率が向上することを証明しました。この2つの培地を組み合わせて使用することにより、最も確実にサルモネラを分離することができることを明らかにしました。
今回決定した2つの培地の組み合わせによりフィールドワークを展開し、自然界におけるサルモネラの循環を明らかにし、人や家畜への感染ルートの解明、予防策の構築につなげたいと考えています。
【掲載論文】
題目:Verification of optimal pre-enrichment culture inoculum size for tetrathionate broth and selenite broth to isolate Salmonella enterica by spike test and field trial
著者:Shiho OYAMA, Hiroto KITAMURA, Shunta FUNADA, Jun HAKOZAKI, Masatoshi FUJIHARA
誌名:Journal of General and Applied Microbiology
公表日:2026年9月4日
本研究は、以下の研究事業の成果の一部として得られました。
・公益財団法人伊藤記念財団「令和7年度研究助成事業」研究代表者:藤原正俊