
情報基盤センター
松崎 義孝
水工学、環境工学、情報工学
岩手大学情報基盤センターの松崎義孝准教授らの研究グループは、伊勢湾の沿岸環境を高精度に再現した12年間(2011~2022年)の再解析データセット「IBRA(Ise Bay Reanalysis)」を構築し、国際学術誌Earth System Science Data(ESSD)に発表しました。
本研究は松崎准教授が国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所在籍時に実施した研究成果をまとめたもので、水温、塩分、溶存酸素などの沿岸環境情報を海面から海底まで3次元に再現しています。データセットは国際データリポジトリZenodoで公開されており、世界中の研究者や行政機関などが利用できます。
本成果により、伊勢湾における貧酸素水塊の発生メカニズムの理解、水質環境の評価などが進み、持続可能な沿岸域管理や環境行政への貢献が期待されます。
近年、閉鎖性海域では海底付近の酸素不足(貧酸素化)が生態系や漁業に深刻な影響を与えることが懸念されています。一方で、海洋観測のみで海全体の状態を継続的に把握することは困難です。
そこで本研究では、実際の観測データとスーパーコンピュータによる数値シミュレーションを融合し、伊勢湾全域の環境変化を高精度に再現するデータセットの整備に取り組みました。
研究グループは、流動生態系シミュレーションシステム「EcoPARI」を用いて、伊勢湾の沿岸環境を再解析しました。特に、海底付近の溶存酸素量を含む観測データを取り込みながら計算することで、水質環境をより現実に近い形で再現しました。
作成されたデータセットは85×85の水平格子、38層の鉛直構造を持ち、水温、塩分、流速、水位、溶存酸素を1時間ごとに記録しています。
構築したIBRAデータセットは、伊勢湾における季節変化や海底付近の貧酸素状態、外洋水の流入などを良好に再現できることが確認されました。
また、本データセットはZenodoを通じて無償公開されており、海洋研究者のみならず、行政機関や環境コンサルタントなども利用できます。
岩手県のリアス海岸を対象とした水環境を再現するためのシステム構築を行い、岩手県沿岸環境の理解を進めるとともに、環境・水産・港湾といった行政への貢献、市民への情報公開に努めます。
【掲載論文】
題目:Ise Bay Reanalysis (IBRA): A 12-Year Ecological Hydrodynamic Reanalysis Dataset for Ise Bay, Japan
著者:Yoshitaka Matsuzaki, Hayato Mizuguchi, Tetsunori Inoue
誌名: Earth System Science Data (ESSD)
論文掲載日:2026年10月29日
データ公開先(Zenodo):
本研究は、以下の研究事業の成果の一部として得られました。
・環境再生保全機構 令和4年度環境研究総合推進費「閉鎖性水域における水環境デジタルツインの実現:生態系モデルのデータ同化手法の確立と水質長期再解析データベースの開発」課題番号:1RF-2201、研究代表者:松崎義孝
・学際大規模情報基盤共同利用・共同研究拠点「標準的な水環境評価に向けた流動生態系シミュレーションシステムEcoPARIのプラットフォーム構築」、課題番号:jh250012、研究代表者:松崎義孝
・文部科学省科学研究費補助金・基盤研究(C)「気象モデルと領域沿岸データ同化による水圏環境数値シミュレーションの精緻化と標準化」、課題番号:24K07694、研究代表者:松崎義孝
・公益財団法人セコム科学技術振興財団 令和7年度 一般研究助成 「海岸・海洋デジタルツインの構築と沿岸環境のレジリエンス向上」研究代表者:越村 俊一(東北大学)