連合農学研究科生物資源科学専攻 朱文睿さんが日本食品科学工学会英文誌「FOOD SCIENCE AND TECHNOLOGY RESEARCH」の2025年度論文賞を受賞

掲載日2025.09.25
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岩手大学 大学院連合農学研究科 生物資源科学専攻 食品科学連合講座の朱 文睿さん(論文執筆当時、現在は理化学研究所)らは,日本食品科学工学会英文誌「FOOD SCIENCE AND TECHNOLOGY RESEARCH」掲載論文により2025年度論文賞を受賞しました。なお,授賞式は日本食品科学工学会第72回大会(2025年8月27~29日,日本大学湘南キャンパス)の会期1日目に挙行されました。
現行の全脂肪/低脂肪/無脂肪ヨーグルトでは離水(淡黄色の透明液体が滲出)が発生して,外観を損ねるという問題があります。本論文は,乳脂肪球の大きさ制御が攪拌ヨーグルトの品質向上に有効であることを界面コロイド科学およびレオロジー的に明らかにしました。この知見は,全脂肪/低脂肪/無脂肪ヨーグルトで生じる離水の抑制に向けて有効な指針になります。

研究成果のポイント

乳タンパク質は,脂肪球界面への吸着によりヨーグルト製造において重要な役割を果たしている。本研究は,再構成乳中の脂肪球の粒子径分布を改変することで,攪拌ヨーグルトの物理化学的特性に対する乳脂肪球の影響を明らかにすることを目的とした。高圧均質化により乳タンパク質と乳脂肪球の結合が増加したことが示された。再構成乳試料のゼータ電位とタンパク質の表面疎水性は増加した。高圧(≥20 MPa)均質化処理した再構成乳で調製した攪拌ヨーグルトは,微細なメゾスコピック構造を呈し,保水力と見掛け粘度が向上した。透過型電子顕微鏡および原子間力顕微鏡による観察では,乳脂肪球がカゼインミセルと効果的な結合を形成する傾向が認められ,ヨーグルトのネットワーク構造が微細化され粘度が向上した。これらの知見は、乳脂肪球の大きさ制御が攪拌ヨーグルトの品質向上に有効であることを示している

掲載論文
題 目:Impacts of milk fat globules on the physicochemical properties of stirred yogurt
著 者:Wenrui ZHU and Makoto MIURA
誌 名:Food Science and Technology Research
公表日:2024年5月19日(J-STAGE)
論文URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/fstr/30/2/30_FSTR-D-23-00167/_article/-char/en

日本食品科学工学会:
会長 松井利郎(九州大学)
総会員数(令和7年2月末)2,195名
URL:https://jsfst.smoosy.atlas.jp/ja

【用語解説】
・stirred yogurt(撹拌ヨーグルト):発酵タンク内で製造したヨーグルトを一旦は撹拌して解砕し,個別の容器に充填したヨーグルトのこと
・zeta potential(ゼータ電位):固体と液体との境目を固液界面と呼び,界面から少し液体側の位置(すべり面)に生じる静電的な帯電のこと
・protein surface hydrophobicity(タンパク質表面疎水性):電荷移動型蛍光色素の一つであるアニリノナフタレンスルホン酸(ANS)は,その蛍光特性がANSの周辺環境により劇的に変化するため,蛍光プローブ分子として使用されており,これを利用したタンパク質分子表面の疎水性を定量化した数値のこと
・mesoscopic structure(メゾスコピック構造):数nm~数十nmスケール(単量体,重合体)での構造のこと

本件に関する問い合わせ先
岩手大学農学部 共同研究講座「シン・フードラボ」   三浦 靖(特任教授)
019-621-6255