獣医学部共同獣医学科・小林沙織准教授が第18回日本獣医腎泌尿器学会「ポスター発表部門 優秀賞」を受賞

掲載日2026.09.10
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2026年8月22日~23日にベルサール飯田橋ファーストで開催された第18回日本獣医腎泌尿器学会学術集会・総会において、獣医学部共同獣医学科の小林沙織准教授らの研究グループが、ポスター発表部門の優秀賞を受賞しました。
本発表は、不二製油株式会社との共同研究として進めている「難消化性大豆たん白(MAM:Microbiota Accessible Macropeptide)によるネコの腎機能改善と腸腎連関に関する研究成果」をまとめたものです。
本研究成果は、日本経済新聞電子版(2026年9月3日)及び日経バイオテクONLINE(2026年9月4日)でも紹介され、注目を集めています。

MAM(Microbiota Accessible Macropeptide)とは

MAMは、大豆たん白を特定のプロテアーゼで分解して得られる「難消化性大豆たん白」であり、一般的なたん白質とは性質が大きく異なる新規素材です。
通常の大豆たん白は消化吸収されて体内のたん白質代謝に影響しますが、MAMは難消化性であるため、ほとんど吸収されることなく大腸まで到達し、腸内細菌叢に作用したのち糞便として排泄されます。
そのため、腎臓病療法食で重要とされる「低たん白質」という栄養学的原則と矛盾せず、体内のたん白質負荷を増やすこともありません。
大腸まで到達する難消化性成分であることから、腸内環境に作用する可能性がある素材として期待され、その作用を明らかにするために本研究を開始しました。

研究概要

慢性腎臓病(CKD)は高齢猫で高い発生率を示し、国内でも重要な疾患として認識されています。近年、腸内環境の変化が腎機能に影響を及ぼす「腸腎連関」が注目されており、栄養学的アプローチによる腎機能改善が新たな可能性として期待されています。
本研究に先立ち、まず 健常猫を対象とした安全性試験を実施し、 難消化性大豆たん白(MAM)の摂取が安全であることを確認しました。 この安全性データを基盤として、腎臓病猫への応用研究を進めました。
本研究では、パイロット試験として、健常猫2例、CKDステージ2の猫5例に難消化性大豆たん白(MAM)を30日間給与し、血液・尿・糞便の各指標を評価しました。その結果、以下のような顕著な改善が認められました。
- 健常猫・CKD猫の全例で血中クレアチニン値が低下
- CKD猫の 3例でステージ2から1への改善
- 体重は全例で変化なく、筋肉量の減少を伴わない“真の腎機能改善”
- MAM摂取終了後も 数カ月にわたり腎機能が維持
- 便臭の改善
- 腸内細菌叢のバランスが変化し、Prevotella属/Bacteroides属比が全例で上昇
- 糞便中の腐敗産物(フェノール、p-クレゾール、インドール)が減少
- 血中尿毒素(インドキシル硫酸、p-クレシル硫酸、フェニル硫酸)が一部で低下
血中クレアチニン値(Cre)の低下については、たん白質制限食によって血中クレアチニン値が低下するという報告が複数存在します。
しかし、これらは摂取たん白質量を減らすことで血中クレアチニン値が下がる現象であり、体重や筋肉量の減少が伴う場合もあります。
一方、本研究で用いた 難消化性大豆たん白(MAM) は体内でほとんど吸収されず、たん白質負荷を増やさず、体重減少も伴わずに血中クレアチニン値が低下した点が特徴的です。
このことから、腸内環境の変化(腸腎連関)を介して腎機能マーカーが改善した可能性が示され、既存の「たん白質制限によるCre低下」とは異なる、新規性の高い栄養学的アプローチであることが明確になりました。

研究成果の意義

研究の結果、MAMを摂取した猫では腸内細菌叢のバランスが変化し、腸内で生じる腐敗産物や尿毒素の産生が上流から抑制される可能性が示されました。
これらの結果から、腸内環境と腎機能の関係(腸腎連関)を介して、猫の健康維持に寄与する可能性が示されました。
本研究は、難消化性大豆たん白(MAM)が腸内環境の改善を介して猫の腎機能の健康維持に寄与する可能性を示した初めての報告です。
そのため、MAMは猫の健康維持を支える新たなペットフード素材としての活用が期待されます。

一般社団法人日本獣医腎泌尿器学会(JAVNU)は、伴侶動物を中心とした獣医腎泌尿器病学の発展と、臨床・研究水準の向上に貢献することを願い、学術集会で発表された優れた演題に対してアワード(優秀賞)を贈呈しています。本アワードは毎年1回開催される学術集会において、選考委員会の厳正な審査を経て選出され、受賞者の栄誉を称えるとともに、その研究成果が広く獣医療界に発信されます。『研究発表部門』『症例報告部門』『ポスター発表部門』の3部門から優秀賞が厳選されています。結果発表は学術集会直後の8月末に公式サイト等で行われ、受賞者への表彰式は翌年の学術集会当日に盛大に執り行われます。

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問合せ先

獣医学部 共同獣医学科 小林 沙織
メール:saoriki@iwate-u.ac.jp

不二製油株式会社 広報窓口
メール: kouhou@so.fujioil.co.jp